古今洋歌集

…力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をも哀れと思はせ、男女の仲をも和げ、猛き士の心をも慰むるは、それ歌なり。
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靖国騒動覚書

三國一朗「戦中用語集」(岩波新書 黄版310 1985年)の前書きに、こうある。

 自分がそこに居た過去の時代を思い起こす、それは誠に辛いことだ。
 自分が生きていた時代のことなら、楽に思い出せる楽に書ける、というのは嘘である。
 なまじっか知っているため記憶しているため、楽には書けない。
 生きていたから、経験している。経験したから記憶している。そう考えるのは危険だ。
                                    

これを前置きとし、今回の騒ぎで「はたしてどうか」と思った事々、私的覚書。

その1.
 「私が生きて経験したから」は、「それが事実だ」という拠り所になっても「私の主張には正当性がある」という根拠に必ずしもならない。前線体験者・被爆体験者などの1次経験者はもとより、「親や祖父が戦死した、空襲地上戦で没した、靖国神社に祀られている、祀られていない」という非直接経験者にも、こうした混同が多かった。
 
その2.
 20代を中心として「一国の代表(首相)が靖国に参拝するのは当然」「外国に干渉されるべきではなく独立国の威厳を守った」などに類する意見が多かった。NHK15日夜の討論番組内で行っていた携帯電話によるアンケートでは、20代の60%が上記意見だった(しかし、回答者数を明らかにせずパーセンテージだけ表したのは不良)。

その3.
 死者に口なし、慰霊参拝は死者の為ならず、と云う。「英霊はココ(靖国)に居て、いまコウ思っている」と確信に満ちた表情で語る人々が目についた。件の首相の孫という老嬢や、特攻生き残り(エンジントラブル等)の御仁などだ。
 鈴木邦男一水会顧問は、この傾向を踏まえつつ「“靖国英霊は、亜細亜が西欧列強に脅かされる中で大東亜平和のため戦った”との神社側説明を前提とすれば、英霊の願いはアジア平和にあるはずだが、靖国合祀と首相参拝でアジア近隣国との関係がキナ臭くなっている(のは願いに反する)。英霊が恐れているのは、靖国が戦争に向かう理論的武器になる(維持される)ことではないか」と書いている(東京新聞8月16日朝刊)。

その4.
 「靖国神社の位置づけ・意味づけ」が賛成派と反対派で異なっている。異なっている以上に大きく隔たっていて、日本人どうしでも「なかなか埋められぬ」印象だ。まさに、ヤスクニは国内問題である。一方に「日本人は死せば神仏となりソレを祀り拝むは日本の伝統文化、靖国は戦死者を追悼する唯一国家施設である」があり、また一方に「靖国は軍国主義の精神支柱であり勝ち目なき前線に兵士を送るための装置であった、現在もA級合祀を諾としたようにアジア太平洋15年戦争を自存自衛戦として正当化し顕彰している」がある。
 また、国家観として、一方に「中国韓国の侵略という歴史事実に配慮すべきである、日本は市民社会が未成熟である、いまだ米の占領下から完全独立を果たしていない」があり、一方に「日本は自存独立を長く保ってきた誇り高き国家である、中国韓国のように国内問題を反日に転嫁する未成熟な国家の意見に左右される必要なはい、一般人の反日感情は教育によって演出されたものだ」がある。

その5.
 「靖国の曖昧さ=戦後処理の曖昧さ=日米関係の曖昧さにある」との意見があり、少数ながら目を引いた。姜 尚中・東大大学院教授は、戦後日本の「出生の秘密」が、靖国騒動の源にあると書く(東京新聞8月16日朝刊)。出生の秘密とは、何か? 戦後日本の出発点に「旧体制と占領米国との“談合”、つまり象徴天皇制導入とA級戦犯7人絞首刑の“引換取引”があった」と解す。極東軍事法廷の結果を受け入れ、万世一系の神格剥奪に替わって戦場死者の神格化を行った。これが「国内問題として戦争責任を問い直す作業」から、日本人の思考を遮った。だから、日本人は戦争の「原罪」を清算できぬままであると云う。

その6.
 「日本人のカミってなんだ」と突っ込む論は、ほとんど無かった。はたして、人霊は神となりうるのか。日本の宗教文化の伝統として、ヒトがカミとして祀られたのは、いつ頃から(一説に菅原道真、一説に豊臣秀吉からと多説あり)で、どんな要件(天皇家を呪い祟る霊力を鎮める等)があったのか。


【本日のつけ足し(私の感想)】

 騒動全般としては、「多様な意見があり、それを尊重する」という建前のウラで、
自分と意見の合わぬ他者を無視ないし排斥するという空気が漂っていた。個別には…

「その1.」の感想
もちろん、戦時体験の事実と、人それぞれの生に深く刻まれた体験は、深く重く傾聴すべきだ。が、そうした個人体験が意見主張の論拠となることはあっても、自説の正しさを担保するには至らない。

「その2.」の感想 
こうした若者たちは、やがて自ら「負の遺産」を清算せねばならぬ時が来たら、どう対応するのか、そこまでの意見と覚悟があるのか、ちと気になる。世間知らずの若者が、退職間近の上司に誘われ、上司の顔の効く馴染み店で御馳走を食べたが、払いは自分のカードだった。後でツケがきて泣きを見ても知らぬ。

「その5.」の 感想
 軍国神仏習合主義(こんな用語があるとすれば)の解体が不徹底だったのであり、それは米占領政策のミスだとの論もあるが、当時ソレをやったら日本人は立ち直れなかったのではないか。英霊神格化は、現実として、日本人が立ち直り生きる精神支柱として機能した。これは否定できないと思う。ともかくもマスコミは、靖国騒動が一段落したら、ドイツとの比較等も交え戦後処理の十分なところ、不十分なところを洗い出してもらいたい。内政不干渉を云うのは、それからでも良し。

「その6. 」の感想
私個人としては、このあたりに興味があるのであって、研究者先生方の意見を聞きたい。
基礎情報については「おことばコレクション」に並べておいた。

そのほか
・筑紫哲也のニュース番組、セットに「鳥居」を数多く飾る。この安易な演出は不快。
・騒動で思いがけず儲けたのは「純ちゃん饅頭」製造元、神社の土産物屋か。
・加藤紘一の母上は無事で良かった。

はたして、来年はどうなるか?

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